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最高裁判所第二小法廷 昭和48年(オ)1189号 判決 1977年5月27日

上告人

岡田ヨシコ

外二名

右三名訴訟代理人

米田泰邦

被上告人

岡田隆二

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人米田泰邦の上告理由について

民訴法四二〇条一項六号に基づく再審の訴が、同条二項後段の要件を具備するためには、前審判決の証拠となつた文書等の偽造又は変造につき有罪の確定判決を得る可能性があるのに、被疑者の死亡、公訴権の時効消滅、不起訴処分等のためこれを得られなかつたことを必要とするから、文書偽造等につき有罪の確定判決がない場合に同条一項六号に基づいて再審を申し立てる当事者は、被疑者の死亡等の事実だけではなく、有罪の確定判決を得る可能性があることについてもこれを立証しなければならない(最高裁昭和三九年(オ)第一三七四号同四二年六月二〇日第三小法廷判決・裁判集民事八七号一〇七一頁)。しかし、有罪の確定判決を得る可能性そのものは被疑者の死亡等の時に既に存在すべきものであるから、右再審の訴の除斥期間は、被疑者の死亡等の事実が前審判決確定前に生じたときは、同法四二四条三項により右判決確定の時から起算すべきであり、また、右事実が前審判決確定後に生じたときは、同条四項により右事実の生じた時から起算すべきである。本件の場合、被疑者岡田留次郎の死亡は前審判決確定前であつたのであるから、同法四二〇条一項六号に基づく再審の訴は、前審判決確定後五年の除斥期間内に提起すべきものといわなければならない。所論の再審甲第一号証の一は、前審の審理の過程においてその成立の真否が重要な争点とされた本案甲第一号証(売券証)の亡岡田千年名下の印影が同人の実印によるものであるかどうかについての鑑定書であり、その鑑定依頼・提出は有罪の確定判決を得る可能性があることについての立証方法の問題であるにすぎず、右鑑定書の作成されたのが前審判決確定後であるからといつて、その作成の日が同法四二四条四項にいう再審事由発生の日にあたると解するのは相当でない。それゆえ、前審判決確定の日から同法四二四条三項の除斥期間を起算すべきであるとした原審の判断は、結論において正当であつて、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(大塚喜一郎 岡原昌男 吉田豊 本林讓 栗本一夫)

上告代理人米田泰邦の上告理由

<省略>

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